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第3章 ゼオライトの応用例から、内部被曝防止の可能性を考える
ゼオライトの安全性と品質について
このように、優れた放射性物質の吸着・排出作用を持つゼオライトですが、内部被曝を軽減するためにこれを口の中に入れる場合には、それ自体の安全性も気になるところです。
このことに関しては、ゼオライトの医療応用の日本における第一人者であるメディアートクリニック院長の前山和宏医師が次のように述べています。
「私のクリニックでは、ゼオライト水の内服、並びに滅菌したものを点滴で血管内に投与する治療を行っていますが、これまでに副作用などの問題が生じたことはありません。その経験から、体内に投与する上での安全性にはまったく問題がないといえるでしょう」
ゼオライト水とは、ゼオライトの微粒子を含むミネラル水のことです。前山医師は、ゼオライトを治療に取り入れるときにその品質にこだわりました。園芸用やペット用のゼオライトをそのまま人に投与するわけにいかないのはもちろんのこと、医療の現場では厳密な機能と安定した効果が求められるからです。
前山医師はこう説明します。
「私が今現在、治療に採用している製品には出雲産のゼオライトが用いられていますが、本当に患者さんの『命を救う』ために必要なものとして自信を持って使っています。
ゼオライトを医療で用いるときに最低限求められる機能は、有害物質を効果的に吸着できる細かさと、ゼオライト自体の高い安全性の2点です。この条件を満たさなければ医療の現場で使うことはできないと私は考えています」
ゼオライト自体は、地球上のあちこちに存在する鉱物です。しかし、その品質はまちまちであり、工業用に使われるゼオライトには合成のものも多いのです。合成の方が孔の構造も一定にそろい、品質も安定するからです。
一方、天然のゼオライトは分子レベルでの有害物質を吸着させるのにちょうど良い孔が形作られており、医療用としては最適です。しかし、合成のものが医療用に適さないというわけではありません。天然のものも合成のものもそれぞれにメリットがあるのです。これについては後の方で詳しく説明します。
ゼオライト製品の品質に関しては、天然かそうでないかというよりも、分子レベルの仕事ができる細かさに加工できるかできないか、という点の方が重要です。
ゼオライトは生成時に内部に水を蓄えているため、製品化に当たってはその水の除去が必要です。海外で製品化されたものは加熱処理で水分を蒸発させ、その上で細かく砕いています。しかし、加熱のときにゼオライトの特性である整然とした孔の構造が焼き崩れてしまうことがあります。そうなると、本来の性能が著しく劣化してしまうようです。
また、海外の技術では細かくするのにも限界があり、分子レベルで吸着作用を発揮するには大きすぎるか、その逆に小さすぎて孔の構造が壊れてしまうなどして性能の劣化につながります。
そうした製品であっても、製造過程でできる破片の中に、偶然、孔の構造を残したまま小さく砕けた部位が混入されるため、体内の有害物質を一定の割合で吸着・排出することはできるでしょう。そのため、何かしらの医療的なメリットはあるといえますが、それは製品によってまちまちであり、信頼に足りうるものではないといえます。