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巻末付録 Q&Aでゼオライトに関する疑問が解決!
ゼオライトの性質について
少し専門的な内容になりますが、ゼオライトそのものの性質についても補足しておきましょう。
Q30 ゼオライトは種類によって細孔の大きさが違うとのことですが、なぜですか?
A30 ゼオライトの基本骨格はケイ素(Si)と酸素(O)が三次元的につながったものです。この2種類の元素のつながり方のルールは、
○一つのSiが四つのOと、O‐Si‐Oの角度が約109・5度となるように結合する
○一つのOが二つのSiと、Si‐O‐Siの角度が約145度となるように結合する
と、非常に単純ですが(80ページ参照)、100以上の異なる「つながり方」が可能であり、それぞれ異なる構造となります。結果、孔が大きいものと小さいものができるのです。
Q31 細孔の大きさと吸着の強さは関係しますか?
A31 関係しますが、吸着の強さに関しては細孔の大きさだけではなく、吸着の対象となる物質と孔の内壁とのそれぞれの性質の組み合わせも重要です。同じ組み合わせである場合なら、「孔が小さいほど吸着の強さは上がる」といっていいでしょう。
吸着は孔の内壁と吸着対象との間に働く引力によって起こります。この引力は距離が近いほど大きいため、孔の大きさが吸着対象の物質と同じくらいであれば、内壁は吸着物質の四方八方を非常に接近して囲むことになり、より強い引力が働きます。
ただし、あまり小さすぎると、そこに入っていくことのできる物質がなくなってくるので、ちょうどいい大きさであることが重要です。
Q32 天然ゼオライトと人工ゼオライトの違いを教えてください。
A32 同じ「つながり方」のゼオライトであっても、骨格を形成するアルミニウムや、孔の中の陽イオンといった、ケイ素と酸素以外の含有元素の割合が異なると、性質が少しずつ異なってきます。
人工ゼオライトの場合は、それらのコントロールが可能となるため、特定の物質の吸着を目的にしたものなどを製造することが可能です。
Q33 ゼオライトの陽イオン交換はなぜ起きるのですか?
A33 ゼオライトの骨格構造内にもともと存在する陽イオンよりもマイナス電荷にとらわれやすい(選択性が高い)イオンが孔の中に流されたとき、もとの陽イオンは追い出され、後から加えた方が骨格構造内に居残るからです。
イオン交換によって吸着できない物質については、細孔のサイズに合うものであれば、細孔の壁と吸着される物質間に働く引力で吸着します。
ゼオライトの陽イオン交換については80〜84ページもご覧ください。
Q34 イオン交換が起きる物質の優先順位はなぜ生じるのでしょうか?
A34 一般には電荷数が大きいほど、あるいは同じ電荷数なら原子番号が大きいほど、吸着されやすいといわれています。それによって優先順位が生じます。
Q35 ゼオライトは、ケイ素と酸素の格子状の結合体の中に、ナトリウムなどの陽イオンが浮いて入っている状態だと聞きましたが、なぜそのような形態になるのでしょうか?
A35 物質は電気的に中性でないと安定的に存在できないからです。ケイ素は形式的にはゼオライト中で電荷が+4であり、マイナス電荷の酸素によってそれが打ち消されて、骨格構造としては中性を保つことになります。
ところが実際のゼオライトでは、骨格構造中のケイ素の一部がアルミニウム(Al)に置き換わっています。そして、アルミニウムの電荷は+3でケイ素より1少ないため、結果的に骨格構造はマイナス電荷を帯びることになるのです。
このマイナス電荷を打ち消すために、陽イオンが孔の中に入っています。それによってゼオライトは安定的に存在できるわけです。